オーストラリア 学生ビザの2016年7月改訂の背景|2016年12月現在
2016年7月より新制度が導入されてより、さまざまな影響が出ていたオーストラリアの学生ビザについて、オーストラリア大使館でセミナーが開催「国際教育政策と学生ビザに関して」に参加してきました。
目次
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1、オーストラリアと日本の関係性
2、学生ビザ制度の変更に関して(変更理由・審査期間・主な変更点・変更後の状況)
3、補足情報
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1、オーストラリアと日本の関係性
オーストラリアと日本には深い友好関係の歴史があります。
日本からのオーストラリアへの修学旅行や研修旅行はもちろん、日本・オーストラリア間の交換留学も非常に盛んで、日本からオーストラリアへ渡航する留学生数の増加と同様に、オーストラリアから日本へ渡航する総数も増加傾向にあります。
数字で見ると、
・100以上の姉妹都市
・中学高校 約650の姉妹校提携
・大学 約560との提携
・日本語教育の開講割合は世界で第3位
・オーストラリアにて、英語コース(ELICOSコース)を受講する生徒は中国に次いで日本人が第2位
など、より、オーストラリアと日本との関係性の深さを感じます。
2016年度ノーベル医学・生理学賞を受賞した東京大学の大隅教授が行った研究のもとにもオーストラリアの留学生が参加していたそうです。
このノーベル賞授業の知らせの電話を受けたのがオーストラリアからの留学生だったとか、そうではなかったとか…。
今年のノーベル医学・生理学賞の受賞が決まった東京工業大学・栄誉教授の大隅良典先生を祝福するため、歴代の受賞者7名が大使館に。もちろん多くのメディアの方々も。 pic.twitter.com/g438vPsHVA
— スウェーデン大使館 (@EmbSweTokyo) 2016年11月23日
オーストラリアでは、高品質の教育を提供しています。
例えば、
・Education Council
・Australia International Education 2025
・Australian Global Alumni, National innovation and science Agenda
が協力し、留学生を守るためNational CodeやESOS法などの見直しも常に行い、質の高いオーストラリア教育を提供しています。
【参照記事】
オーストラリアには「ESOS法」という留学生を保護する法律があるのを知っていますか?
もとより友好の深いオーストラリアと日本ではありますが、近年の留学人気を受けて、2015年度は600,000件以上の入学数(※)に達するなど、オーストラリアへ学生ビザでの渡航者数も増加しています。
※入学数とは渡航期間は問わずオーストラリアの教育機関で就学した件数です。
しかし、オーストラリアへの留学が人気だからこそ、2016年7月からの学生ビザ制度変更に関しては多くの人々が懸念を示していました。
【参照記事】
【オーストラリア 学生ビザ】新しいシステムの導入による影響
今回のオーストラリア大使館セミナーでは、学生ビザ新制度導入後、改めて、変更点と、制度導入後の動向をお話いただきました。
2、学生ビザ制度の変更に関して
そもそも、なぜ、学生ビザ制度は変更にいたったのでしょう。
学生ビザ制度の変更理由は、移民局側にとって複雑だったった学生ビザ申請手続の「簡素化を図る」ことにありました。簡素化を図るために、これまでは国によって異なっていたビザ申請方法を統一しました。
学生ビザの枠組みの簡素化 概要
先述の通り、オーストラリアにとって対日本を始めとする国際教育は非常に重要な役割を担っており、オーストラリアが今後発展していく上で、なくてはならないものです。増加する留学生に対し、学生ビザ申請手続きの簡素化を図り、移民局の負担を軽減することは重要な対策といえるでしょう。
しかし、実は今回の変更は、移民局側の負担を減らすだけが目的ではありませんでした。
簡素化以外にも大きく2つの目的があります。
1つ目、学生ビザの本来の目的である「就学」を目的とした留学生の確保
2つ目、教育機関の品質向上
1つ目、学生ビザの本来の目的である「就学」を目的とした留学生の確保について
実は、学生ビザ制度を悪用し、不法滞在したり不法就労したりする人々がいます。
または悪用とまでは言わずとも、学生ビザのルールを順守しない留学生が存在します。今回の制度変更では、ビザ申請に伴う必要書類にGenuine Temporary Entrant (GTE)と呼ばれる留学目的などを明記する書類が義務付けられ、申請者の目的が、「就学」という本来の学生ビザ取得の目的に沿っているどうかを、より的確に見極める仕組みへ変更されました。
2024年3月18日更新:2024年3月23日以降、学生ビザを申請する場合、GTE(Genuine Temporary Entrant)はGS(Genuine Student)へ変更となりました。なお学生ガーディアンビザ(subclass590)申請については、GTE要件が維持されます。
2つ目、教育機関の品質向上について
1つ目の学生ビザで不法就労や不法滞在する留学生が存在するということは、それをアシストする教育機関があるということです。例えば、オーストラリアの学生ビザでは出席率を80%以上に守る必要があり、これを守らない生徒は、不法滞在の可能性があるとして、教育機関は移民局へ届け出るなり、なんらかの対応していかなければなりません。しかし、俗に「ビザ取り学校」と呼ばれる学校では、不法滞在を黙認する代わりに、学費を支払っているにも関わらず、まともな教育を提供しないという学校も存在します。
審査の過程において、制度変更前は留学生の国籍をもとにリスクレベルを設定し、この設定に基づいて学生ビザ取得の難易度が異なっていまいました。新しい制度では、「国籍をもとにしたリスクレベル」に、「教育機関のリスクレベル」を加え、審査を行う仕組みへ変更されました。
これに伴い、リスクレベルを抑えるため、教育機関自体が学生や教師の管理を含む学校運営の見直しを行い、よりよい教育機関を目指すようになります。
では具体的に何が変更になったのか?を見ていきましょう。
主な変更点は、大きく2つです。
1、学生ビザ サブクラス種類変更
2、審査方法(国籍と教育機関のリスクレベルの組み合わせにより査定へと変更)
【参照記事】
【オーストラリア 学生ビザ】2016年7月より適応された新しい制度について知ろう。
今回の変更で、日本国籍の申請者にとってはビザ申請時に提供が必要な情報や書類が増加となりました。
例えば、上記でも少し触れたGenuine Temporary Entrant (GTE)に関して、日本国籍の申請者は必須提出書類ではありませんでした。しかし、今回の変更を受け、全申請者がGTEの提出を義務付けられました。
GTEは留学したい理由や、その教育機関やコースを選んだ理由などを英語のエッセイやレター形式で作成します。
特に記載事項のチェックリストやテンプレートはなく内容は自由に作成できます。
将来的にオーストラリアでの進学を検討している場合は、進学希望の旨を、正直に記載しても大きな影響は特にありません。日本国籍の申請者の場合、内容よりも、申請者が個々に作成していることが重要です。
併せて、健康面の問題や過去の犯罪歴もなく、学生ビザ取得者としてふさわしいかどうかを注視されるようになりました。
日本人にとっては、「難しく」なった今回の制度変更ですが、ビザ取得までに要する時間などに大きな影響が出るのではないかと懸念されていました。
実際のところ今回の制度変更が与えた影響はどうだったのでしょうか?
結論、日本国籍の申請者にとっては大きな影響は出ていない様子です。
2016年7月1日(制度変更日)から10月31日までの3ヵ月間の申請数及び申請結果受領者数(発給、拒否、取消などいずれかの結果受領)は、ほぼ同数と、審査に対して大幅な遅れや影響が出ている様子は見受けられないとのことでした。
3、補足情報
今回の変更で8種類あったサブクラス(学生ビザの種類)は2種類へと変更されました。
1つ目は、サブクラス500=通常の学生ビザです。中学・高校、専門、大学、英語コースなどばらばらだったサブクラスが統一されました。
2つ目は、サブクラス590=学生ガーディアンビザです。
学生ガーディアンビザとは、原則6歳以(※)上18歳未満の学生ビザ申請者に対し、21歳以上の親・法的後見人・親族が、オーストラリアで保護者として学生ビザ申請者と共に滞在するためのビザです。
※学生ビザの対象は6歳以上となります。
参照:http://japan.embassy.gov.au/tkyojapanese/studentguardianvisa_jp.html
学生ガーディアンビザでは、対象となる学生ビザ保持者のビザ有効期限まで、もしくは学生ビザ保持者が18歳になるまでの、いずれか短い期間までオーストラリアへの滞在が可能です。
ガーディアンビザでの就労は不可です。そのため、学生ビザ申請者の就学期間が12ヵ月未満だったとしても、必ず、申請時に健康面の保証として最低12カ月の医療保険(OSHC)への加入が必要となります。
なお、学生ガーディアンビザ保持者は、英語コース(ELICOS)であれば週20時間までであれば、就学可能です。ただし、英語コース以外のコース受講の場合は最大12週間までとなります。
【参照サイト】
オーストラリア移民局サイト http://www.border.gov.au/Trav/Stud
オーストラリア大使館サイト http://japan.embassy.gov.au/tkyojapanese/studyinaust_jp.html