「2013年11月に飛び出してから早くも3年半が過ぎようとしています。」
アシスタントナース有給インターンシップで大きな一歩を踏み出し、その後、ビザをワーキングホリデービザから学生ビザへ切り替え、Certificate Ⅳの看護関係のコースを勉強しながら、介護施設で働いていた歩さん。
Certificate Ⅳ 修了後、本格的にオーストラリアでの看護師資格取得を目指すため、改めて語学学校でIELTS対策をしながら、2年2ヶ月間働いた介護施設での仕事を終え、オーストラリアの婦人科クリニックでの仕事をスタートされました。外国人がアシスタントナースとして有給で働く上で、メジャーな職場は介護施設です。今回は、婦人科クリニックで働く非常に珍しい仕事に就くことのできた歩さんの体験談をご紹介します。
1、踏み出した看護留学が背中を押した向上心
2、CertificateⅣへの挑戦
3、ワールドアベニューネットワークが生み出した奇跡 介護施設から婦人科クリニックへ
4、婦人科クリニックでの仕事を通じて感じた価値観や考え方の違い
5、正看護師にチャレンジ!今後の目標
1、踏み出した看護留学が背中を押した向上心
2015年8月に一時帰国、その際にいただいた留学の体験談では、「今後の目標を教えてください。」という質問に対して、「滞在期間を延長して、もう少し英語を頑張ろうと思います。 自分の考えや思いをしっかりと相手に伝えられるようになりたいです。また海外ボランティアに参加した際に専門的な技術や知識を私なりに伝えられるようになりたい」とお答えいただいていました。それから早1年半年、もともと参加参加した看護留学、アシスタントナース有給インターンシップの後、ワーキングホリデーから学生にビザを切り替え、さらなる英語と看護の勉強を続けてこられました。
歩さんは日本で6年半、糖尿病治療を中心に臨床を積んでこられ、看護留学で渡航後も、オーストラリアの某団体が主催するボランティアに参加、オーストラリアからフィリピンに渡り、糖尿病を抱える人々のケアにあたられたことがありました。その際に直面したフィリピンの糖尿病への治療環境の実状は、歩さんの想像を超えていたと言います。
オーストラリアでの生活
歩さん:
フィリピンでは多くの患者さんが、糖尿病と診断されることに強い絶望を感じていました。フィリピンでは糖尿病が、日本でいうところの末期がんと診断を受けた際の衝撃と同じなのです。
例えば、ボランティアでフィリピンを訪れ、患者さんのケアに対応したときのことです。その患者さんは足をケガしたものの、十分な治療はもちろん傷口をなるべく清潔に保つということすらできていない状況でした。それが余計にケガを悪化させていました。フィリピンでは日本のように高度な治療を受けることができないことは、私も理解していました。私は私自身の想定のなかで、「これならできるのでは?」と考え、「できる限り、傷口を清潔な水であらい、できれば包帯を毎日変えましょう」と伝えました。しかし、その患者さんは、「そんな水があれば、飲んでいる」と答えられました。自分の認識の甘さや本当の意味で発展途上国の現状を理解できていない自分に腹が立ちましたし、とても不甲斐なく思いました。
不甲斐なく感じたことは他にもあります。
私は日本で、糖尿病治療に対して6年間以上の臨床経験があり、それなりに専門的な知識や技術を学び、身に付けてきたと感じていました。しかし、それらの経験を英語で人々に伝えようと思ったとき、当時の私の英語力では十分な説明を行うことができませんでした。「英語ができない」というだけで、持っている知識も技術も経験も役に立たなくなってしまう……、その悔しさを身に沁みて感じた瞬間でした。
看護留学を通じてのオーストラリアでの生活しかり、介護施設での仕事しかり、すべての経験を通じて、もっと英語力を磨きたい、もっと自分の考えや思い、意見をきちんと伝えられるようになりたいと感じるようになりました。
2、CertificateⅣへの挑戦
最初に参加したアシスタントナース有給インターンシップ・プログラムを修了した後、英語力をさらに磨くため、CertificateⅣレベルの看護専門のコースに進むことを決めました。アシスタントナース有給インターンシップで、CertificateⅣの学費を稼ぎ、引き続き、アシスタントナースとして介護施設で仕事をしながら、看護の勉強を進めていきました。
アシスタントナース有給インターンシップでは看護助手として働くためCertificateⅢと呼ばれるコースを通じて、解剖生理学やオーストラリアの法律、多文化の中での就労に対する理解、移乗機器の使用方法、そのトレーニングなどを行います。一つレベルの上がるCertificateⅣでは、ここに薬についての知識や取扱に関する勉強が追加される形になります。
薬の名前は、日本でも英語またはドイツ語がベースとなっていることが多いため、聞いたことのある薬の名前も多く、英語で薬に関する知識や取扱方法を学ぶに伴い、そこまで大きな苦労はありませんでした。
しかし、やはり英語、日本語英語?カタカナ英語になっている薬の名前は、英語だと発音が大きく異なり、知っている薬の名前なのに、「???」となることも多々ありました(笑)
例えば、モルヒネ→モルフィン、ビタミン→バイタミンです。ビタミンなんかは有名ですよね。
他にも、ジゴキシン(強心薬)→ダイゴキシン、ラシックス(利尿剤)→レイシックス。
ラシックスは、レーシック(角膜屈折矯正手術)のことかと思ったほどです(笑)。
日本とオーストラリアとでは、薬をカウントする際の方法が大きく異なります。
日本ではダブルチェックが基本で、数はもちろん、薬の色や形などを細かく確認します。
オーストラリアでは、病院や介護施設にはすでに1週間分内容がパッキングされたものが届きます。ダブルチェックするものの、基本的に数を数えるのみで、数字が合っていればOKと、日本と比べるとだいぶざっくりです。
オーストラリアでは分業化が進んでおり、同じ看護助手でも、CertificateⅢまでを修了している看護助手と、CertificateⅣを修了している看護助手とでは仕事の役割が大きく異なります。
CertificateⅢまでを修了している看護助手の場合、一般的な日常生活援助が主な仕事となります。例えば、食事介助、トイレ介助、歩行介助、バイタルサイン測定、血糖測定などです。対してCertificateⅣを修了すると、それらの業務は行わず、正看護師と共に行うメディケーション(薬の確認と配薬、記録など)と、傷の手当(皮膚裂傷、褥瘡、糖尿病性水疱・潰瘍など、消毒や包交処置、ドレッシングの交換)のみを行います。私が勤務していた介護施設では、カルテ以外にケアチャートと呼ばれる、ケガや傷などの経歴の記録があり、そのチャートを見ながら、処置を行います。時給は0.5ドルから2ドル程度上がりました。
3、ワールドアベニューネットワークが生み出した奇跡 介護施設から婦人科クリニックへ
実は今回、同じくワールドアベニューで看護留学していた方で、正看護師を取得した方から、仕事をご紹介いただきました。それが婦人科クリニックでの仕事です。彼女は現地の方と結婚し、現在お子さんが1人、お腹に2人目のお子さんがいらっしゃいます。正看護師として婦人科クリニックで働く彼女から、職場の人手が足りない、自分もじきに産休に入るため、働いてみないかと声をかけてもらったのです。
今まで働いていた介護施設の看護助手の子たちからは「どうやって婦人科クリニックでの仕事なんか見つけたの!?」と物凄い驚かれました(笑)。看護留学に強いワールドアベニューネットワーク、半端ないなと感じた瞬間です(笑)。
婦人科クリニックでは、中絶、避妊具の装着などを行った後のケアをする「リカバリールーム」と呼ばれる場所で働いています。施術を終えた患者さんは、このリカバリールームと呼ばれる場所で1時間程度、術後の経過観察をうけます。バイタルサイン測定を行ったり、サーチレーションが低い場合は酸素吸入を行ったり、痛みを訴える場合は、患者さんから痛みの程度、常備薬として何を服用しているか、また過去の妊娠経験の有無などをアセスメントし、数種類の中から薬を選択し与薬します。
20分程度経過して、大きな問題がなければ、コーヒーや紅茶、ビスケットを提供し、休憩してもらいます。その間も、私は術中の内容やカウンセリングレポート、その他、処方箋や薬に関する医師の説明などに伴う書類の確認を行います。
1時間後、経過良好であればそのまま自分で家に帰るか、お迎えの方(ご家族や恋人など)がいる場合はその方へ連絡し、お迎えいただきます。帰宅前に、出血の確認、生活上の注意点の説明、処方箋の内容説明を行います。患者さんのなかにはずっと泣いている人や、嘔吐する人、痛みを強く訴える人などさまざまで、必要に応じて施術室の看護師や医師へ報告、相談し対応しています。
リカバリールームの定員は5名です。1時間という時間で経過観察を終え患者さんが帰宅できないと、待合室にいる次の患者さんを待たせることになってしまうので、クリニック全体が円滑に機能するよう責任を持ってコントロールしなくてはなりません。とは言え、システマチックに対応するわけにいかないため、患者さんの訴えをきちんと理解し、適切に対応する必要はあります。デリケートなタイミングで患者さんと向き合いますが、患者さんは若い方も多く、今回の中絶を決断した経緯や、避妊器具を装着してみての感想など、患者さんとのコミュニケーションの中で学ばせてもらうこともたくさんあります。20代の若い子たちに若者言葉を使われると、もはや何を言われているのか、わからないこともあります(笑)
高い英語力をもって、さまざまな状況下でも冷静に適切に判断し、きちんとリカバリールームをマネージメントしなければなりません。1人で5人の患者さんをコントロールするのですから結構大変です。
患者さんが少しでも苦痛を緩和し、安心して帰宅できるよう、どのようにサポートしていくか、日々勉強しています。
職場の人間関係はとても良好で、看護師は私の質問に対して親身に答えてくれますし、彼女達からたくさんのことを学ばせてもらっています。執刀医、麻酔科医も看護助手の発言や意見にきちんと耳を傾けてくれ、日本よりも医師と看護師、看護助手など各専門職の関係が対等に感じます。
私にとって婦人科は初めての分野ですが、このような環境で働かせてもらっているおかげで、本当にストレスを感じることはありません。(笑)
今はモーニングシフト(8:30~14:00または15:30)で、時給は日本円で3,000円程度です。週2-3回でも贅沢をしなければ十分生活していけるので、つい先日2年2ヶ月働かせてもらった介護施設の方は退職しました。
4、婦人科クリニックでの仕事を通じて感じた価値観や考え方の違い
私が働く婦人科クリニックでは、年齢層は20代〜30代前半の方が多く、インド人やネパール人、オーストラリア人などバックグラウンドはさまざま。インドやネパールの方の場合、結婚前の性交渉は禁止されているため、祖国であればかなり罰則ものなようです。ネパール出身の友人に聞いたところ、結婚していたとしても、お金を貯めたり、家を購入したり、子供を産み育てる前にやるべきことがあるので(もちろんその家族にもよりますが)、それらの前に妊娠した場合、中絶することが多いようです。ただ、中絶するものの、患者さんの中には赤ちゃんのエコー写真をスマートフォンで撮影し、記念に持ち帰る方もいらっしゃいます。
他にも、結婚していてすでに子供が2人いるご家庭で、3人目を作る予定はなかったが、妊娠してしまったため、中絶したという方がいらっしゃいました。その奥さんの旦那様は、つらい思いをした奥さんのために花束を持って迎えにきていました。
日本でも、予定になかった妊娠で、中絶をするというケースがないとは言いませんが、どちらかというと、「できたなら産もう」という考え方になることが多いように思います。
婦人科クリニックで働くにあたり、文化や習慣が違うのはもちろんですが、信仰する宗教や、祖国の事情などの影響により、考え方や取る行動が大きくことなる様を垣間見たように感じています。
5、正看護師にチャレンジ!今後の目標
今は、あらためて語学学校のIELTS対策コースに通っています。目標は、IELTS7.0またはOET‘B’以上のスコアです。理由は、正看護師資格取得のためです。
オーストラリアでは正看護師資格を取得するために、オーストラリアの看護協会が指定する単位数を満たした学位(看護)と、英語力IELTS7.0またはOET‘B’の2つが必要です。私の場合、日本で大学(看護学部)を卒業しているため、頑張るべきは「英語」です。
日本人だからといって何の対策もせず、漢字検定1級が受かるか?というとそうではないのと同じように、オーストラリアで3年間生活しているからといって、IELTS7.0が取れるかというと、そんな簡単に取れません。
やはり試験ですので、読む・書く・聞く・話すの4技能を改めて学び、IETLS7.0という高スコアを取得するために、対策を行わなければなりません。
学位を持っているのだから、看護師資格にチャレンジしたらいいのに!と言われ続けて早3年…(笑)
国際協力活動への参加や、日本への帰国、いろんなことで悩み、踏ん切りがつかずにいたこともありましたが、ここにきて、やはり本気で正看護師の資格取得に取り組んでみたいと考えるようになりました。
どこまでできるのか、まだわかりませんが、今までのように一つひとつ、頑張っていこうと思います。
お名前:疋田 歩様
渡航期間:2013年11月から現在
渡航先:オーストラリア/シドニー
留学プログラム:看護留学
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